半導体業界は、昨今ますます注目されていますが、実はその裏側には多くの課題が潜んでいます。売上高の高さや技術力の高さから、多くの人が憧れる業界かもしれませんが、その一方で、業界の厳しい現実も存在します。
例えば、生産の大部分が海外に依存していることや、新規参入のハードルが高いこと、そして、AIの進歩によって半導体エンジニアの仕事が脅かされる可能性があることなど、様々な問題があるのです。
この記事では、半導体業界の平均年収や、やめとけと言われることがあり理由、将来性などについてわかりやすく解説していきます。
半導体業界の仕事は何をするのか？わかりやすく解説します！
半導体エンジニアという職業は、半導体製品の設計や製造、評価など、幅広い業務に携わる技術者です。その中でも特に重要な役割を果たしているのが、半導体チップの設計です。半導体チップは、スマートフォンやパソコンなど、私たちが身近に使っている電子機器に欠かせない部品であり、その設計には高度な知識と技術が必要です。
半導体エンジニアは、設計に必要な回路や素子の知識を持ち、それらを組み合わせてチップを作り出します。その過程で、コンピューターシミュレーションを行い、最適な回路や素子の組み合わせを探索することもあります。また、製造工場での評価や品質管理、顧客とのやり取りなど、幅広い業務にも携わります。
世の中が高度化する中、半導体業界は急速に発展しており、世界中で需要が高まっています。例えば、半導体市場の規模は2023年には約5000億ドルに達しており、今後も成長が期待されています。また、新たな技術の開発や自動車業界の電動化など、今後ますます半導体が必要とされる分野が増えていくことが予想されています。
半導体エンジニアの年収
半導体エンジニアの年収については、業界や職種によって大きな差があります。一般的には、半導体メーカーに勤めるエンジニアの年収は比較的高い傾向があります。
各社の求人データをもとに見ると、半導体エンジニアの平均年収は500万円前後となっています。
国税庁の「令和元年民間給与実態統計調査」によると、日本の平均年収は436万円ですので、一般の労働者に比べて高めの水準であると言えます。
年齢別に見ると、20代で350万円〜、30代で400万円〜800万円、40代以降は500万円〜900万円以上になることが多いです。また、職種によっては、年収1,000万円を超えることもあります。
また、特定の技術や分野に精通している半導体エンジニアは、年収が更に高くなることがあります。例えば、人工知能（AI）や自動運転などの分野で活躍するエンジニアは、高い年収を得ることが期待できます。
ただし、最近の半導体市場は需給バランスが乱れることもあり、業界全体の年収水準にも影響を及ぼすことが予想されます。また、企業によっても年収が異なるため、求人情報や転職エージェントの情報を参考に、自分に適した企業を探したいですね。
半導体業界の離職率
半導体業界は、技術的な進歩が速く、市場の変化が激しいことで知られています。そのため、半導体エンジニアの離職率も比較的高い傾向があることが予想されます。
半導体業界の離職率について、公的機関のデータを調べてみましたが、見つかりませんでした。
ただ、厚生労働省「平成 30 年雇用動向調査結果の概況」によると、製造業の離職率は、9,4%となっています。
全体的に見ると、他の業種よりも離職率は少ない傾向がありますが、ほんのわずかですが、入職率に比べ、離職率のほうが上回る結果となっています。製造業全体で9,4%ですので、半導体業界の離職率は10％以上だと予想されます。
離職率が比較的に高い原因としては、転職や異業種への転身がしやすい状況や、新しい技術や製品の開発に携わりたいという意欲的なエンジニアが多いことが挙げられます。また、労働環境や待遇の面で不満を抱くエンジニアもいるということも事実です。
ただし、企業によって離職率には差があり、良好な労働環境や待遇を提供する企業は、離職率が低い傾向があります。特に、半導体メーカーの中でも大手企業は、高い給与や福利厚生を提供していることが多いため、離職率が低いことが予想されます。
しかし、企業によって異なることもあるため、就職前には企業研究を行い、求人情報や転職エージェントの情報をもとに待遇面を調べるようにしたいですね。
半導体エンジニアの仕事内容と求められる能力
半導体は現代社会を支える重要な素材であり、スマートフォンやパソコン、自動車、医療機器など、私たちが日常的に使っている様々な製品に使われています。そして、半導体を作るうえで、半導体エンジニアは必要不可欠な存在です。
半導体エンジニアの仕事内容
半導体エンジニアの仕事内容には、設計、製造、評価、品質管理、生産管理などの分野があります。
このように、半導体エンジニアの仕事内容は多岐にわたっており、専門分野によって異なります。
半導体エンジニアに求められる能力
半導体エンジニアには、以下のような能力が求められます。
半導体エンジニアは、製造工程において重要な役割を果たしています。彼らは、装置やプロセスの改善を行い、より高性能かつ高品質な半導体製品を生産するために貢献しています。
半導体業界はやめとけと言われることがある5つの理由
半導体業界は高い技術力と高い給与水準で知られていますが、一部の人からはやめとけと言われることもあります。
なぜ半導体業界がやめとけといわれることがあるのか、以下のような理由が考えられます。
市場の変化が激しい
新しい技術や製品が次々と登場し、市場の変化が激しい事が挙げられます。景気後退や競合との競争にによって、需要が低迷し、多くの企業が経営難に陥いる可能性も否定できません。そのため、就職や転職においては、不安定な雇用状況が懸念される場合もあります。
業界が非常に競争的
半導体企業は、製品の市場シェアを確保するために、常に他社との競争にさらされています。そのため、業界内での地位を確立するためには、非常に高い技術力とスキルアップが必要とされます。
労働時間が長い
半導体業界は、製品の開発や生産に多大な時間を要するため、労働時間が長いことが多いです。また、製品の品質管理にも多大な時間を要するため、労働時間が長くなることがあります。
常に最新技術を身につける必要がある
半導体業界は新しい製品や技術が開発されるたびに、それに対応するために、新しい技術を学ぶ必要があります。また、技術が進歩するにつれて、より高度な知識が必要になるため、常に学習を続ける必要があります。
品質管理に対する責任が大きい
半導体業界では、製品の品質に問題がある場合、多大な損失を被ることがあります。そのため、品質管理に対する責任が非常に大きく、常に品質管理に注力する必要があります。
以上のように、半導体業界にはやめた方がいいといわれることがあるかもしれませんが、一方で、半導体業界は、市場規模が大きく、今後も成長が期待されているため、魅力的な業界でもあります。
日本には世界中で活躍している半導体企業も多くあります。将来的にも需要が伸びることが予測されており、半導体エンジニアとしてのキャリアを考える価値は十分にあると言えます。
半導体業界の将来性
半導体業界は、我々の日常生活に欠かせない製品に使われている重要な技術です。スマートフォン、パソコン、自動車、医療機器、エネルギー、そしてIoTなど、多様な分野で使用されています。
さらに、AIや5G、電気自動車などの技術の発展に伴い、半導体需要は今後も拡大すると予測されています。
半導体業界の現状
半導体業界は現在、急速な成長を遂げています。世界中の様々な産業で使われる半導体技術の需要が増え、市場規模は拡大しています。例えば、2021年の世界の半導体市場規模は前年比26.2％増の約5,890億ドルに達し、2022年には更に伸びると予想されています。
しかしながら、最近の半導体のサプライチェーンにおける深刻な供給不足により、業界は厳しい状況に直面しています。特に、自動車産業における供給不足の影響が大きく、各国政府も半導体の生産拡大に取り組んでいます。
一方で、新しい技術や製品の開発も進んでおり、AIやIoTなどの分野での活用が期待されています。特に、5Gの普及により高速通信が可能になり、半導体の需要は今後も拡大すると予想されています。
半導体業界の課題
先述したように、半導体業界は急速に成長している分野ですが、それに伴って多くの課題が浮き彫りになっています。その中でも代表的な課題を挙げてみましょう。
人材不足
半導体業界は、高度な専門知識を要する分野であり、人材不足が深刻な問題となっています。特にAIやIoTなどの技術革新が進む中で、それに対応する人材不足が顕著になっています。
そのため、企業は、若手の育成や外国人労働者の受け入れなど、人材確保に向けた取り組みを進めています。また、技術的な専門性を重視する企業もあり、従業員の技術力向上に力を入れています。
原材料価格の高騰
半導体の需要が急激に拡大している中で、原材料の確保も課題となっています。特に、中国が世界最大の半導体市場となりつつある中で、中国政府が積極的な半導体産業政策を行っていることから、原材料の確保競争が激化しています。加えて、コロナ禍や輸送価格の高騰の影響もあり、原材料価格の高騰や供給不足が起きています。
そのため、企業は、代替品の開発や原材料に関するリスクマネジメントにも取り組んでいます。
サプライチェーンの問題
半導体業界は、非常にグローバルな産業であり、多くの企業がサプライチェーンに悩まされています。コロナ禍の影響により、サプライチェーンに影響が出ている状況が続いています。特に、半導体製造に使用される材料や機器などに遅れが生じたことにより、生産が停滞する企業も現れています。また、政治的な問題により、一部の国で輸出規制が行われたことにより、供給が不安定になっています。
これらの問題に対応するためには、サプライチェーンの安定化が求められます。そのため、企業は、サプライチェーンのリスクマネジメントに取り組んでいます。例えば、複数のサプライヤーを確保することで、リスクを分散する取り組みがあります。
半導体業界は、技術の進歩が著しく、多くの課題に直面しています。しかし、企業は、人材確保や原材料に関するリスクマネジメント、サプライチェーンのリスクマネジメントなど、様々な取り組みを進めています。これらの取り組みにより、半導体業界は、今後も技術の進歩をリードし続けることができるでしょう。
半導体業界の今後の見通し
半導体業界は、急速なテクノロジーの進化と需要の高まりにより、今後ますます重要性が高まっていくことが予想されます。特に、人工知能やIoT、自動運転技術などの普及に伴い、半導体の需要はさらに増加することが予測されています。
現在、半導体業界は、コロナ禍や輸送費高騰の影響を受けて、供給不足や価格高騰などの課題に直面していますが、それでも業界の将来性は非常に高いと言えます。
特に、次世代の半導体技術の開発により、高速かつ省電力なデバイスの実現や、量子コンピューターなどの新しい分野への展開が期待されています。
また、世界中での電気自動車の普及など、環境問題の解決に向けた技術開発にも半導体が必要不可欠となっています。
半導体業界は今後もますます発展し、需要は増加していくことが予測される一方で、新しい技術の開発や供給不足など、課題も多くあることが明らかです。業界に関わる人々は、これらの課題に立ち向かい、新しい技術を開発することで、半導体業界の発展に貢献することが求められます。
半導体業界が向いている人
半導体業界が向いている人は、以下のような特徴が挙げられます。
- STEM分野に興味がある
半導体業界は科学技術分野に属し、物理学や電気工学、数学などの専門知識が必要です。そのため、STEM分野（科学（Science）、技術（Technology）、工学（Engineering）、数学（Mathematics））に興味がある人に向いています。 - 問題解決能力が高い
半導体業界は、製品の開発において多くの問題に直面します。そのため、問題解決能力が高く、論理的思考力に優れた人が求められます。 - 市場の変化に対応できる柔軟性
半導体業界は技術の進歩が非常に早く、常に新しい技術が開発されています。そのため、変化に対応でき、自己啓発に努めることが重要です。 - 国際的な視野を持っている
半導体業界はグローバルな産業であり、多くの企業が海外展開しています。そのため、国際的な視野を持った人材が求められます。 - コミュニケーション能力がある
半導体業界では、開発チーム内でのコミュニケーションが非常に重要です。製品の開発には多くの職種が関わりますので、自分の考えを上手に伝え、チームで協力して仕事を進めることが必要です。
以上のような特徴を持つ人は、半導体業界でのキャリアに向いていると言えます。ただし、競争が激しく、勉強やスキルアップが必要な分野でもあります。ですので、継続的な学習を行い、自分自身を向上させることが重要です。
半導体業界に興味がある方は、これらの特徴を持っているか考えてみてくださいね。
参考：
半導体業界が向いている人
半導体業界が向いている人には、以下のような特徴が考えられます。
以上のような特徴を持つ人は、半導体業界でのキャリアに向いていると言えます。半導体業界は競争が激しく、勉強やスキルアップが必要な分野でもあります。ですので、この分野に興味がある人は、継続的な学習やトレーニングを行い、自分自身を向上させることが重要です。
半導体業界が向いていない人
半導体業界が向いていない人には、以下のような特徴が考えられます。
以上のような特徴を持つ人は、半導体業界に向いていないかもしれません。自分に合っているかどうかを見極めるために、自己分析を行うことが重要です。自分自身がこれらの特徴に当てはまらないかを確認してみてくださいね。
半導体業界のよくあるQ＆A
半導体業界はオワコン？
最近半導体業界はオワコンって言われてるけど、本当にそうなの？
B: 実は、そうではないんですよ。現在のテクノロジーの進歩や、モノのインターネット（IoT）、5Gなどの需要増加に伴い、半導体需要は急増しています。
そうなんですか？でも、最近のマイクロチップ不足問題を聞いたことがありますが・・・
それは確かに問題ですが、マイクロチップ不足の原因は需要の急増に追いつけない生産力不足であって、需要自体が低下しているわけではありません。実際、半導体の市場規模は2023年には5,000億ドルを突破し、今後もさらなる成長が予想されています。
なるほど、でも技術進歩が止まってしまうことはないんでしょうか？
実際には、半導体業界は常に新しい技術を開発しています。最近では、人工知能（AI）、ブロックチェーン、クラウドコンピューティングなど、新しい分野への需要も急増しています。
なるほど、そういえば最近、自動運転車やドローンの技術も進んでいるし、それらにも半導体が使われているんですよね。
そうですね。半導体はあらゆる分野で使われており、今後も需要が高まることが予想されます。もちろん、競合が激しい業界ですが、その分、成長性も高くやりがいのある分野ですよ。
半導体業界への就職・転職は未経験でも大丈夫？
半導体業界への就職・転職は未経験でも大丈夫でしょうか？
半導体業界は技術力が重要視される業界であり、技術的な専門性を重んじる企業が多いです。例えば、キオクシアは高い技術力とイノベーションの追求にやりがいを見出せるエンジニアが求められています。
しかし、未経験でも半導体業界に就職・転職することは可能です。半導体業界には、半導体設計や製造、品質管理、営業など、様々な職種があります。職種によって必要なスキルや知識は異なりますが、常に学ぶ意欲を持ち、新しい技術や知識に対して興味を持っている人は向いているでしょう。
半導体業界には、未経験者でも入社後に研修やOJT（先輩社員が後輩に対し、業務に必要な知識やスキルを実践しながら）などの教育制度が整っている企業が多く、未経験からでもスキルを身につけることができます。また、半導体業界は今後も需要が高まることが予想されており、将来性がある業界と言えます。
自分に合った職種を見つけ、学び続ける意欲を持って取り組んでみてくださいね。
半導体業界は激務できつい、しんどい？
半導体業界は、エンジニアにとってはストレスが多いとも言われていますが、その一方で成長性の高い業界でもあります。2023年の半導体市場規模は5,000億ドル以上にもなっており、今後も拡大が見込まれています。
最近はAIやIoTといった分野の急速な発展もあって、半導体市場の需要はますます高まっています。
半導体業界は競争が激しい分、プレッシャーもあるし、働き方改革も必要ですが、実際に働いている人たちは、やりがいや成長を感じていることが多く、その分仕事に対するモチベーションも高いです。
激務やきついの感じ方は人それぞれ違いがありますが、やりがいや成長を感じられるなら、ある程度つらくても頑張れるかもしれないですよね。
参考：
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